Q & A

question & answer

「痔」ってどういうもの?

肛門の病気は一般的に痔と言われていますが、いろいろな種類の病気が含まれており、全てを一つにまとめることはできません。

最も多く見られるものからいいますと

  • 痔核(いぼぢ):全体の60%
  • 痔ろう(あなぢ):全体の15%
  • 裂肛(きれぢ):全体の15%

また、それぞれが合併していることもあります。痔核は比較的高齢者の方に多く見られ、痔ろうは男性に多く生じます。裂肛は女性に多いのが特徴です。

痔核(いぼぢ)
肛門の奥や肛門下部の静脈のかたまりをいい、うっ血してふくらみ、ときに出血を伴います。脱肛になると排便時に容易に外に出てくるようになり、指で押し込むこともあります。
痔ろう(あなぢ)
肛門の内側にある入口から細菌が入り込み、肛門のまわりで炎症を起こし、肛門の外でうみがでてくるようになったものをいいます。
裂肛(きれぢ)
肛門に裂け傷ができて、痛みが強く、治りにくいのが特徴です。
Q1,痔核は何歳頃にできるのでしょうか。
痔核は、二十歳頃より発生し、無理な排便によって出血や痛みを覚え始めることも多いようです。

これらは自然に落ちつくものですが、三十歳頃からの症状は本格的に強くなり、病院を受診されるケースが増えます。年齢的には、三十~四十歳代の方が多いようですが、実は若い頃からその傾向を持っていた人が次第に悪化していき、その頃になって症状にがまんできなくなり病院に来られる、というのが実情のようです。

五十歳以後になって急に痔が悪くなることは少ないですから、急に出血があった時は、痔が悪くなったのだろうと簡単に片づけてしまっては危険なこともあります。なぜなら直腸がんなど、出血を伴う別な病気がかくれていることもあるからです。
Q2,痔核の症状にはどんなものがありますか。
痔核は少しずつ大きくなっていき、ある程度大きくなると症状が出るようになります。また、時々増悪して強い症状を現します。

主な症状は出血で、排便時に真赤な血が出るのが特徴です。これは痔の血管が破れて出血するためです。普通の静脈にはもっと黒ずんだ血がながれているのですが、痔の血管は動脈と静脈が密につながっているので、静脈の中にも他の部分に比べて動脈血に近い赤い血が流れています。これが流れ出してくるので真赤な血と見えるのです。

時折、軽い痛みを感じることがありますが、そう強いものではありません。
つぎに脱出の症状が現れますが、これは痔核が次第に大きくなって起こります。脱出がひどくなると痛みが強くなることがあります。
Q3,痛くないのに出血するのですが。
初期の痔核は痛みはありませんが、排便のときに便がイボをこすって出血することがあります。出血の量は比較的多く、サーッとほとばしるような場合も。ただし、内痔核でも急性の炎症を起こすと痛みがあります。

肛門からの出血は、大腸がんにもよくみられます。とくに直腸やS状結腸にできたがんは、便の表面や、お尻をふいた紙に血液がつく場合があります。便秘や下痢を繰り返したり、腹痛、残便感、腹部のしこり、貧血などがあらわれる場合は、大腸検査を受けるようにされた方がよいでしょう。
Q4,急に腫れて痛いのですが。
外痔核は、突然、腫れてはげしく痛むのが特徴です。血栓が破れて出血することもあります。もともとあった外痔核が、疲れや下痢などをきっかけに悪化して痛い、という場合もあります。
Q1,痔ろうはなぜなるのですか。
直腸と肛門の境は、歯状線といって波型になっており、そこに小さな凹みがいくつかあります。その凹みは、肛門小窩あるいはクリプトとよばれています。その奥には肛門腺という、たとえば汗を出す汗腺や脂肪を出す皮脂腺に似た腺があります。腸の中には無数の細菌が常に存在していますが、たまたまこれが運悪くクリプトから肛門腺に入り込み、感染を起こすことがあります。この化膿によって膿が肛門の周りにたまります。これを肛囲膿瘍といい、ズキズキと夜も眠れないほどたいへん痛みます。また全身あるいは、局所的な発熱を伴います。

この部位を外からみると、浅い場合は肛門の周囲が赤くふくれあがり、それと認めることができますが、深い場合は、外からみただけではわからないこともあります。この場合でも、まわりを押すと、そこに強い痛みを生じるのでわかります。肛囲膿瘍は放っておきますと自然に皮膚を破って外に流れ出すこともありますが、多くの場合は痛くてたまらないので、切開排膿してもらうことになります。このようにしますと一時的に楽になりますが、これで病気が治ってしまうわけではありません。一度細菌が進入したクリプトや肛門腺の部分は閉じてしまうことなく、永久に開いた状態になり、ここから絶えず細菌が進入し、中で化膿して膿となって外に流れ出します。すなわち、クリプトから肛門周辺へかけての膿の管が出来上がるわけです。これが痔ろうです。したがって痔ろうは自然に治ることがないので、手術によって治さねばなりません。
Q2,急に腫れて痛いのですが。
痔ろうの初期の肛囲膿瘍も腫れて痛いのが特徴です。うみが自然と破れて外へ排出されると痛みがなくなってしまいます。
Q1,裂肛は何歳頃にできるのでしょうか。
裂肛は二十歳代に現れてくる場合が多く、痔ろうは三十歳代をピークにして肛囲膿瘍という形で発生することが多いようです。
Q2,裂肛とは、どんなものですか。
裂肛とは、肛門にできた裂け傷のことで、一般に「きれ痔」とよばれています。

肛門の表面は、肛門上皮という薄い皮膚でおおわれていますが、皮膚が薄いだけに裂けやすいのです。肛門は普通は締まっていて、便通の時だけ広がるのですが、硬い便が通過する時浅い傷がつき、紙に少しにじむ程度の出血があります。普通この傷はすぐ治ってしまいますが、便秘症で毎日硬い便が出たり、肛門が狭かったり、何か塊ができていてそれが肛門外に出ていこうとして無理をしたりすると、繰り返し傷がつき、痛みを伴って治りにくくなります。慢性化すると肛門狭窄・肛門ポリープ・皮膚痔などを生じて症状が悪化します。
Q3,出血して痛いのですが。
一般的に、裂肛であることが多いようです。少し紙につくものから、ポタポタと便器が赤くなるものまでいろいろです。最初はピリッとして、排便後もジーンとした痛みが残るのが特徴です。ただ、出血だけで痛みがない場合もあります。慢性化して傷が古くなると出血がなく、痛みだけという場合もあります。